キルギスの馬

先日、岩波ホールでキルギス映画「馬を放つ」を見ました。キルギスの映画自体も初めてでしたが、3年前にキルギスを歩いているのでどんな情景が出てくるかという興味もありました。映画は遊牧文化を深く感じさせる内容でしたが、ここでは旅行の時感じたことを…

ジョージアの桃源郷

日本も桃の花の季節で、山梨あたりの見事な桃畑の写真が見かけられますが、ジョージア(グルジア)の田舎の山岳地帯でも桃源郷のような風景を見ることが出来ました。スワネティ地方の山岳道路をメスティアという町を目指し走ると、初めは日本でも見慣れた山の…

ジョージア(グルジア)について

先日の大相撲初場所でジョージア(グルジア)出身の力士・栃ノ心が優勝しました。4年前ジョージアを旅行した時、現地のガイドがこう聞いてきました。 『日本の大相撲にジョージア出身の力士が3人いるのを知っているか?』 当時私は知りませんでしたが、ガイド…

アイラ島を前に

長い間(本当に長い間)ブログの更新を怠っていましたが、しばらくぶりに(本当にしばらくぶりに)再開しました。間を空けてしまいましたこと、申し訳ありません。 最初に書くことは、昨年夏のスコットランド行きのことです。 スコットランド北端の島をいくつか…

世界で最も美しい書店

最近テレビの番組の中でもやっていましたが、世界で最も美しい書店という触れ込みの書店。ポルトガルのポルトの街にありました。教会へ向かう坂道の途中、気をつけていないと見過ごすような入り口ですが、中へ入ると確かにこれはと思わせるたたずまいでした…

ノマドの国

アルジェリアでの大変な事件が起きてからもう日にちがたちましたが、それらのニュースの中で、サハラに住むトゥアレグの人たちが分離独立運動をしているということがありました。どこからの独立を目指しているのか、アルジェリアから?マリやチャドから?。は…

エスペラントと猫語

インターナショナルな言葉としての英語については様々な議論があります。確かに現在、英語を話さなければあらゆる分野で世界と渡り合ってゆけないのは確かです。何故日本人がこんなに英語を(あるいは英語以外の外国語でも)苦手とするのかよく分かりませんが…

なぜヒトは旅をするのか

榎本知郎「なぜヒトは旅をするのか」化学同人・同人選書 非常に魅力的なタイトルに惹かれて読みました。「ヒト」ですから、生物学、人類学上の「人間」ということです。この本の問題提起自体が非常に面白かった。霊長類の中で旅をするのはヒトだけであること…

木を植える人

「木を植えた人」という絵本があって、確か南フランスのあたりで荒れ地になってしまった場所に木を植え続ける男の話だったと思いますが(手元にないのではっきりしません)、静かで割合感動的な話だったように思います。日本でも宮沢賢治の「虔十公園林」とい…

アソーレス紀(2)

アソーレスに元々行きたかった理由は、イタリアのアントニオ・タブッキがこの島々を題材にした作品を出していて、前々から気にかかっていたから。「島とクジラと女をめぐる断片」(須賀敦子訳)。 1970年代はじめに航空機が初めて就航した?、あるいは空港が新…

アソーレス紀(1)

この夏、ポルトガルの西海上にあるアソーレスという島(群島)を訪ねました。アゾレスと表記されることも多いのですが、濁らない響きの方が感じが良いと思っています。 アメリカ東海岸とヨーロッパ大陸とのちょうど中間にあり、ヨーロッパの西の果てになると思…

ヨーロッパの自転車レース

フランス、イタリア、スペイン等の自転車のロードレースを、時々テレビで見ています。自転車レースそのものに特に知識や興味があるわけではなく、コースに映し出される各地の何でもない田舎の風景が良い感じに思えるからです。緩やかな麦畑の中に点在する小…

テルマエ・ロマエ再び

イタリア・フィレンツェに近い(ローカル鉄道で1時間ほど)モンテカチーニ・テルメという街に何日か滞在しました。いわゆる温泉保養地で、街の中に何カ所か「温泉」があります。日本のものとは異なり、基本的には飲用、プール式に入ることも出来るようです。…

新藤兼人さんと「裸の島」

映画監督の新藤兼人さんが亡くなりましたが、その「裸の島」という作品について思い出したことがあります。 私は実際にはこの映画を見たことはありません。ただ公開当時、ポスターを見た覚えがあります。とても地味な(人づてに聞いてですが)内容の作品という…

猫の恋

先日、新聞にこんな句が載っていて笑ってしまいました。 我が猫の 恋の相手に 落胆す どなたの句だったのか分かりませんが、我が家でも、飲み会の集まりでもひとしきり盛り上がりました。なんと親ばか、猫ばかというべきか。しかしよく分かります。我が家の…

幸福の国

GNPよりも幸福度を目指すということでよく取り上げられるようになっているブータン。十年ほど前、主要道路も整備され始めたころに訪ねたことがあります。個人旅行は許可されていず、必ずガイドをつける必要があり(実際問題、それなしではまず無理)ましたが、…

帰林鳥語

日の沈む直前、五階建ての銀行のビルの屋上に、ムクドリがたくさん降りてきているのが見えます。その数はあとからあとから増えてゆきます。向かいの高いビルから見下ろして見ているので、鳴き交わす声は聞こえませんが、相当にぎやかなことと思われます。一…

マンガの受容

バルセロナで「セーラームーン」の看板を見たのはもうずいぶん前のことだし、「クレヨンしんちゃん」のTシャツをやはりスペインの小さな男の子が着ているのを見たのも同じ頃でした。こんなところまでと驚いたのがウソのようで、現在ではヨーロッパで出会う…

ブランクーシと無限の柱(2)

無限の柱の立つ公園は、街の中心から少し外れた公園に立っています。パリに倣って、寺院をはさんでキスの石門と無限の柱とが一直線上に並ぶように設計されたといわれています。確かにその通りなのですが、門から柱に至る道は途中から閑静な住宅地となり、し…

ブランクーシと無限の柱(1)

夏にルーマニアを歩いた時、彫刻家ブランクーシにゆかりの街、トゥルグ・ジウに寄りました。寄ると言っても首都のブカレストからは列車で8時間近く、車窓風景は北部の農村地帯とは少し異なり、緩やかなトウモロコシやヒマワリ畑、牧草地の間に、工業地帯ら…

ルーマニアについて(3)

ルーマニアについて、もう少し書きます。 大統領であったチャウシェスクが追放・処刑されてからずいぶん経ちますが、国の至る所にその遺産というべきものがまだまだ残っているのが見られます。首都のブカレストにある「国民の館」という巨大な建築物もそのひ…

ルーマニアについて(2)

ルーマニア北部のマラムレシュという地方で、17歳くらいの男の子が話しかけてきたことがありました。自分は日本のアニメ、マンガが好きで、英語版からルーマニア語への翻訳の仕事をしているとのこと。こんなところにまで影響が及んでいるのかと驚きました。…

ルーマニアについて(1)

八月に二週間ほどルーマニアを旅しました。ルーマニア北部、ウクライナとの国境近くの村々を歩いて、古い木の教会や中世の要塞教会群を見るのが主な目的。それでも行く先々でルーマニアの人たちから、なぜルーマニアなのかという質問をよく受けました。ほか…

ソングライン

先日の新聞に、放射性廃棄物処理に関して、その処分場が危険であることを遠い未来の人間に伝えるためどうすればいいかという話が載っていました。一万年ほどという長い時間の後。今の言葉、記号、絵などは多分変容していて、伝わらないだろうということです…

爛柯(らんか)の話

中国の説話の中に爛柯の話があります。民話のパターンの一つですが、木こりが山中で碁を打っている二人の仙人と会い、その一局を見ている間に自分の柯(斧の柄)が腐爛しているのに気づく。山を下りてみると百年ほどが経っていた、という話です。リップ・ヴァ…

ものが壊れるということ(2)

大がかりな建造物が壊れるということに関して、モンス・デシデリオという画家の絵を思い出しました。壮大なローマ風の宮殿や街が崩れ行く様、あるいは静まったその廃墟の風景を数多く描き残しています。これは一体何だろうか、と言うのが最初の感想でした。…

ものが壊れるということ(1)

今回の大災害に関連して、ものが壊れることに今まで以上に思いを馳せるようになりました。地震及び津波の巨大なエネルギに対し、多くの構造物が破壊されたのをリアルタイムで目にしたわけです。 一体、ものが壊れるというのはどういうことなのか、分かり切っ…

運命の橋

今度の大震災で大変な被害にあった三陸海岸沿いの土地は、随分昔に徒歩で旅行したことがあります。こんなに高いところまでと思われる場所に明治期の大津波の達した地点表示がたくさんあって、驚いた記憶がありますが、今回はさらにそれを上回ったわけで信じ…

春の行方

この大災害のさなか、何か書くこともためらわれ、空っぽになった気持ちで日を過ごしています。この春の行方はどうなるのか。猫にでも誰にでも尋ねたい。 2週間ほどの出来事の中で気になったことを記します。多くの外国人が国外に待避したのは周知のことで、…

山姥の酒場

テレビで酒場放浪記という番組を見ていて思い出したことがあります。スイスでのことで酒場とは少し違うかも知れませんが。 ツェルマットという町からマッターホルンの麓までケーブルで上がった時のことです。着いたのは午後の最後のケーブルで、そのままケー…