ジョージアの桃源郷

日本も桃の花の季節で、山梨あたりの見事な桃畑の写真が見かけられますが、ジョージア(グルジア)の田舎の山岳地帯でも桃源郷のような風景を見ることが出来ました。スワネティ地方の山岳道路をメスティアという町を目指し走ると、初めは日本でも見慣れた山の風景でしたが、いくつか峠を越え次第に雪山が近くなると道は荒れてwindingを繰り返すようになります。深い渓谷沿いに小さな村々が点在し、桃か杏に似た花が咲き誇って本当に桃源郷のたたずまいでした。
ただ、その途中でガイドが気になることを話してくれました。
『このあたりに山賊がしばしば出たことがあるんだ』
聞けばこのあたりの村に住む母親と息子が組んで、通行人を殺し持ち物を奪うことが頻繁にあったというのです。結局その二人は逮捕され死刑になったということですが、それはわずか六年前のことだと聞かされて驚きました。
またもうひとつ、険しい山の途中に一カ所、西の方面に分かれて行く道があり、洞窟の中をくぐるように細く曲がりながら続いていました。
『あの道はアブハジアの紛争が起きた時、たくさんの難民がここを通って逃れてきた道だ』
とガイドが言っていました。今から十数年ほど前のことです。イスラム系民族とキリスト教ジョージア人の間の争いにロシアが介入して戦闘になったと言うことです。アブハジアはロシアといくつかの国だけが認めた独立国となっています。
『難民たちは何日も食料もなしに歩き続けてジョージアに逃げてきた』
話をする若いガイドも辛い思いを抑えるような表情をしたのをよく覚えています。