2010-01-01から1年間の記事一覧

雨風食堂

ラーメンでもカレーでもそばや酒でも、何でも出すところを雨風食堂というのだと聞きました。何とも不思議な名前です。そういえば田舎の小さな駅の前には大抵一軒だけ、そういった食堂があったような気がします。今でもそうなのかは分かりませんが。以前、旅…

ブザンソンの秋(2)

フランスに着いた時、ちょうど例の大規模なストライキの最中で、ドゴール空港からブザンソンまでの夕方のTGVは何とか運行されて幸いでしたが、帰りの列車が前夜になって運行中止ということが分かり、あわてて列車を変更しました。ブザンソンの街でも小規模な…

ブザンソンの秋 (1)

フランスの東端に位置するブザンソンという街へ、この10月に仕事の関係で行く機会がありました。スイスとの国境に近く、ジュネーブまで車で1時間ほどの距離。この地方の首都ですが、こじんまりとした瀟洒な街でした。街の中心部はドゥー河に囲まれ、河岸…

ルーブルの地下(2)

この研究所を訪ねたのは2回目ですが、7、8年ほど以前に比べ、さらに大型の分析機器などが新たに充実して、いかに国が力を入れているかが分かります。前に行ったとき、まだ若い女性の研究員が、持ち込まれたばかりのルノアールの作品のチェックをしていま…

ルーブルの地下(1)

ルーブル美術館の地下に、美術作品の鑑定や修復を行う研究所があります。位置としてはガラスのピラミッドの近く、通常の入り口や展示のフロアのさらに下になり、当然のことながらセキュリティ・チェックが厳しくされています。以前一緒に仕事をしていた人が…

新しい本について

9月に新しく、「大きな矢印」というタイトルで絵本を出しました。書いたのは随分前ですが、これを出しておかないと何か先に進めないという気がずっとしていました。 ところで、矢印が何を表すのかと言うことを良く聞かれました。「2001年宇宙の旅」のモノリ…

列車の旅

久しぶりに列車の旅をしました。青森の五能線と津軽鉄道。 ところで列車の駅の物売りの形というのは、いつ頃から変わったのでしょうか。いわゆる駅弁売りというものが劇的に減少した時期があったと思うのですが。現在でも地方の駅で駅弁売りの存在していると…

松本竣介と賢治

東北を旅行して、盛岡の県立美術館に松本竣介の絵がかなりあるのを見てきました。松本竣介は1912年に東京で生まれ、その後、3才から16才までを盛岡で過ごしています。意外に思ったのですが、この時期は宮沢賢治が19才から32才の時に重なっています。彼が「春…

パリの公衆浴場

温泉の話のついでに。 古いフランス人の友人からこんなことを聞きました。彼ら夫婦が日本に一年間滞在していた1960年代半ば頃、当時すごい勢いで発展していた東京で、古いものと新しいものとが共存している風景に強い印象を受けたこと。東京タワーが出来、新…

イタリアのテルメ(続き)

テルメの施設の中には、勿論、水着を付けて浴槽(プール)に浸かったり、マッサージを受けたり、また診療所のようなものもあるようです。売店ではガウンやバスローブ、浴用の小物を扱っています。ただっぴろい広間の円柱の下で、ピアノ弾きが古い曲を演奏して…

イタリアのテルメ

先日、機会があってイタリアのフィレンツェとピサのちょうど中間にある町、Montecatini Terme(モンテカティーニ・テルメ)というところを訪れました。フィレンツェからローカル列車(殆ど時間通りに動かない !)に乗って約50分、名前の通りテルメ(温泉)のある小…

犬とオオカミの間

フランス語で黄昏時のことを表現するのに、「犬とオオカミの間」と言う言葉があるのを教わったことがあります。文語的な言い回しではもちろん他の言葉がありますが、この表現は面白くて良く覚えています。犬が自分の家に寝に帰り、オオカミが狩りに出てくる…

国芳のキツネ

国芳の展覧会があったので、府中の美術館へ行ってみました。新緑の中、気持ちの良い日で、我が家から30分かけて歩きました。 この人がどのあたりの時代に生きた人かあまり知識がなかったのですが、明治の初めまで生きて、西洋画の技法も取り入れようとしてい…

境界について(3)

金属などの材料中には、一般に結晶粒界という境界が多数存在します。隣り合った領域での原子の並び方の方位の違いがこの境界を生んでいます。隣同士では基本的な性質は同じでも、この並び方の向きだけがわずかに違っているという訳です。この狭い境界の部分…

里の秋

現在は春の前なのに、急にこのようなタイトルで書きます。 なぜかというと、エドワード・ホックの遺作となった探偵小説(古めかしいですが、この言葉の方がしっくりくる)シリーズ最後の本、「サム・ホーソンの事件簿Ⅵ」を読んでいたら、主人公の暮らすアメリ…

境界について(2)

「境界」を考えるとき、国境ということがすぐに頭に浮かびます。「雪国」の冒頭の一節は、今では単に県境ですが、幕藩体制の頃は確かに国境だったわけです。 ヨーロッパは今では大きなほぼ一つの単位となって、ある国から別の国へ移動する場合も面倒な検閲等…

境界について(1)

先日、大阪に用事で行って人と話していた時、エスカレーターのどちらを空けるか、歩き専用にするかという話で、よく知られたことですが、東京は右を空けるのに対し大阪は逆に左を空けています。この習慣の境がどのあたりになるかということです。調べた人が…

歩く速さ(4)

ところで昔の人は随分速く歩いたような印象がありますが、どうだったのでしょうか。弥次さんと喜多さんは寄り道もしながらのんびりと旅しているようですが、結構速く歩いているのではないかな。 島崎藤村の「夜明け前」の主人公達も馬籠あたりから江戸や京都…