イタリアのテルメ(続き)

 テルメの施設の中には、勿論、水着を付けて浴槽(プール)に浸かったり、マッサージを受けたり、また診療所のようなものもあるようです。売店ではガウンやバスローブ、浴用の小物を扱っています。ただっぴろい広間の円柱の下で、ピアノ弾きが古い曲を演奏していますが、お湯のコップを手にしたお年寄りが2、3人ぼんやりと聴いているだけでした。時間帯(昼間)のせいなのか、どこもがらんとした感じでしたが。
 Montecatini Termeの町から木製のケーブルカーで十分ほど上がったところに、Montecatini Altoという町があり、イタリアでよく見る山の頂に作られた町です。死んだように静かで、ちょっとのぞいた家の庭先にサッカーのインテル・ミラノの旗が飾ってあり、子猫がその下でくつろいでいました。売り家と書かれた札を門に貼った家がぽつぽつと目立ちましたが、これを買う人が果たしているのかと考えてしまいます。
 Altoの町から下に降りるとさすがに賑やかに感じます。Montecatiniは作曲家Verdiにゆかりの町らしく、テアトロ・ヴェルディという劇場があってオペラの演目がかかっており、私が聴いたときは観光客向けにオペラのアリア集をやっていました。ちょうどサッカーのワールドカップが行われていたときで、その夜の指揮者がヴェルディの「ナブッコ」のアリアのひとつを終えた後、観客に向かって0-1で負けていたイタリアが、今1-1に追いついたと報告すると観客がどっと沸きました。その指揮者はこう付け加えましたが。「だからといってナブッコをもう一度演奏するつもりはありません」と。