2011-01-01から1年間の記事一覧

ブランクーシと無限の柱(2)

無限の柱の立つ公園は、街の中心から少し外れた公園に立っています。パリに倣って、寺院をはさんでキスの石門と無限の柱とが一直線上に並ぶように設計されたといわれています。確かにその通りなのですが、門から柱に至る道は途中から閑静な住宅地となり、し…

ブランクーシと無限の柱(1)

夏にルーマニアを歩いた時、彫刻家ブランクーシにゆかりの街、トゥルグ・ジウに寄りました。寄ると言っても首都のブカレストからは列車で8時間近く、車窓風景は北部の農村地帯とは少し異なり、緩やかなトウモロコシやヒマワリ畑、牧草地の間に、工業地帯ら…

ルーマニアについて(3)

ルーマニアについて、もう少し書きます。 大統領であったチャウシェスクが追放・処刑されてからずいぶん経ちますが、国の至る所にその遺産というべきものがまだまだ残っているのが見られます。首都のブカレストにある「国民の館」という巨大な建築物もそのひ…

ルーマニアについて(2)

ルーマニア北部のマラムレシュという地方で、17歳くらいの男の子が話しかけてきたことがありました。自分は日本のアニメ、マンガが好きで、英語版からルーマニア語への翻訳の仕事をしているとのこと。こんなところにまで影響が及んでいるのかと驚きました。…

ルーマニアについて(1)

八月に二週間ほどルーマニアを旅しました。ルーマニア北部、ウクライナとの国境近くの村々を歩いて、古い木の教会や中世の要塞教会群を見るのが主な目的。それでも行く先々でルーマニアの人たちから、なぜルーマニアなのかという質問をよく受けました。ほか…

ソングライン

先日の新聞に、放射性廃棄物処理に関して、その処分場が危険であることを遠い未来の人間に伝えるためどうすればいいかという話が載っていました。一万年ほどという長い時間の後。今の言葉、記号、絵などは多分変容していて、伝わらないだろうということです…

爛柯(らんか)の話

中国の説話の中に爛柯の話があります。民話のパターンの一つですが、木こりが山中で碁を打っている二人の仙人と会い、その一局を見ている間に自分の柯(斧の柄)が腐爛しているのに気づく。山を下りてみると百年ほどが経っていた、という話です。リップ・ヴァ…

ものが壊れるということ(2)

大がかりな建造物が壊れるということに関して、モンス・デシデリオという画家の絵を思い出しました。壮大なローマ風の宮殿や街が崩れ行く様、あるいは静まったその廃墟の風景を数多く描き残しています。これは一体何だろうか、と言うのが最初の感想でした。…

ものが壊れるということ(1)

今回の大災害に関連して、ものが壊れることに今まで以上に思いを馳せるようになりました。地震及び津波の巨大なエネルギに対し、多くの構造物が破壊されたのをリアルタイムで目にしたわけです。 一体、ものが壊れるというのはどういうことなのか、分かり切っ…

運命の橋

今度の大震災で大変な被害にあった三陸海岸沿いの土地は、随分昔に徒歩で旅行したことがあります。こんなに高いところまでと思われる場所に明治期の大津波の達した地点表示がたくさんあって、驚いた記憶がありますが、今回はさらにそれを上回ったわけで信じ…

春の行方

この大災害のさなか、何か書くこともためらわれ、空っぽになった気持ちで日を過ごしています。この春の行方はどうなるのか。猫にでも誰にでも尋ねたい。 2週間ほどの出来事の中で気になったことを記します。多くの外国人が国外に待避したのは周知のことで、…

山姥の酒場

テレビで酒場放浪記という番組を見ていて思い出したことがあります。スイスでのことで酒場とは少し違うかも知れませんが。 ツェルマットという町からマッターホルンの麓までケーブルで上がった時のことです。着いたのは午後の最後のケーブルで、そのままケー…

林檎とジャガイモ

フランス語でジャガイモのことをpomme de terre(大地の林檎)と言いますが、どうしてこんな名前が付いたのかと考えると、ジャガイモ(生の)を噛んだ時のサクッとした感じと、林檎のそれとが似ているからではないかと思いつきました。フランス語を習い始めた頃…