運命の橋

 今度の大震災で大変な被害にあった三陸海岸沿いの土地は、随分昔に徒歩で旅行したことがあります。こんなに高いところまでと思われる場所に明治期の大津波の達した地点表示がたくさんあって、驚いた記憶がありますが、今回はさらにそれを上回ったわけで信じられない思いです。

 亡くなった方、助かった方のニュースを見て、やはり随分昔に読んだソーントン・ワイルダーの「運命の橋」という作品を思い出しました。南米ペルーの峡谷に架かる橋がある日落ちて、たまたまそこにさしかかった5人の人が犠牲になったという事件をモデルにしています。その5人が犠牲になったことに神の意志が働いていたのか、ということを探求、記録しようとした神父の行動に焦点を当て、神の意志が存在しないことをにおわせた書物を残したため、神父が処刑されたという結末だったと思います。今回の被害に対してそのようなものを当てはめる気持ちは全くありませんが、他の国ではそんなことを考える人がいるのかも知れません。ワイルダーは「我が町」という戯曲が割合に上演されている作家だと思います。