ブランクーシと無限の柱(1)

 夏にルーマニアを歩いた時、彫刻家ブランクーシにゆかりの街、トゥルグ・ジウに寄りました。寄ると言っても首都のブカレストからは列車で8時間近く、車窓風景は北部の農村地帯とは少し異なり、緩やかなトウモロコシやヒマワリ畑、牧草地の間に、工業地帯らしきところが散在し、大きな発電所もいくつか見えました。トゥルグ・ジウは決して小さい街ではなく、トロリーバスが走っているくらいですから、このあたりの中心の役割を果たしているのだと感じます。
 ブランクーシの生まれた家はこの街から30キロほどのホビタという村にあり、その生家は保存されています。トゥルグ・ジウには無限の柱、キスの門、静かのテーブルという作品が公園に配置され、街なかには彼の銅像が立っています。ブランクーシという名前のホテルさえありました。
 公園に案内所があり、無限の柱の立っている場所を尋ねたら、わざわざ一緒に数分歩いて、その先の道筋を教えてくれました。案内所自体、数年前に出来たばかりということでしたが、2年ほど前からそこで働いているというその女性は、日本人に会ったのは初めてだと言っていました。ブランクーシの作品のためにこの街を訪れる日本人は結構いるはずですからそんなはずはないのですが、彼女がたまたまそうだったということかもしれません。
 昼に街のレストランに入って、メニューを読むのに苦労していたら、隣のテーブルにいた人が助けてくれ、今日はこのランチを頼むのが良いと教えてくれました。その人も日本人を見たのは初めてだと言っていましたが、ブランクーシを見るために来たというとうなずいて、ここの人々の誇りになっていることが感じられました。

                   (この項続く)