ルーマニアについて(3)

 ルーマニアについて、もう少し書きます。
 大統領であったチャウシェスクが追放・処刑されてからずいぶん経ちますが、国の至る所にその遺産というべきものがまだまだ残っているのが見られます。首都のブカレストにある「国民の館」という巨大な建築物もそのひとつですが、そのほかにも列車で移動すると駅の近くや沿線に、大きな工場が朽ち果てたまま放置されているのがしばしば見られました。しかもその近くに別の新しい工場らしきものが建てられたりしているので、チャウシェスク時代の建物を再利用するのを嫌悪しているのではないかと思われました。もう一つ、北部のシゲット・マルマツェイという町に、チャウシェスクおよびそれ以前の共産主義時代に捕えられ収容されていた収容所が残されています。世話をしてくれたガイドさんがわざわざここへ連れてきてくれました。彼はほかの観光地よりも、悲惨な歴史のここを見せたかったのだなと感じたことです。
 また、歴史といえば、途中で出会って話をしたルーマニアの人が、隣国のハンガリーをあまり快く思っていないことの多いのに気づかされました。常に戦乱、占領等が続いた経緯があるためでしょうか。

 十数年前にルーマニアへ行った人の話では、ストリートチルドレンが多く、悲惨なイメージを持ったそうです。つい七、八年前でもそのような印象を語った人がいました。しかし今回の旅行ではそのような情景に全く会わず、全体として子供たちの表情が明るく思えました。その国の子供の表情を見ると、国の未来がある程度分かると言います。今回もこちらの目に触れない部分がたくさんあることとは思いますが、この国が決して暗くないことは言えるのではないかと思えます。