林檎とジャガイモ

 フランス語でジャガイモのことをpomme de terre(大地の林檎)と言いますが、どうしてこんな名前が付いたのかと考えると、ジャガイモ(生の)を噛んだ時のサクッとした感じと、林檎のそれとが似ているからではないかと思いつきました。フランス語を習い始めた頃、友人がこの言葉が詩的であるとしきりに感心していましたが、私は逆にフランス人のものに対する名前の付け方が即物的であるように感じていて、詩的感性によるものだとは思えなかった記憶があります。勿論、ヨーロッパには林檎が先にあって、後からジャガイモが入ってきたわけでしょうから、大地の林檎という比喩が出来るのは自然なことと思います。
 もともと、動植物に対する名前の付け方は、日本の方がずっとうまいと考えます。ものに対して「見なし」の感覚を働かせて名前を付ける、このような感覚は動植物に対してだけでなく、かなり広範囲にわたって使われています。例えばタツノオトシゴなどという名前は、傑作ではないでしょうか。英語ではsea dragon、フランス語でhippocampe。後者はギリシャ神話の馬頭魚尾の怪物を意味するそうです。
 それにしても、これほど多数の動植物に一般名(学名ではなく)が付けられ使われている国は、余り無いのではないかという気がします。