ルーブルの地下(1)

 ルーブル美術館の地下に、美術作品の鑑定や修復を行う研究所があります。位置としてはガラスのピラミッドの近く、通常の入り口や展示のフロアのさらに下になり、当然のことながらセキュリティ・チェックが厳しくされています。以前一緒に仕事をしていた人がここの名誉研究員となっているので、中を見せて貰う機会がありました。エックス線分析や電子顕微鏡など多数の分析機器を充実させた研究所で、大学院の学生も含め百何十人かのスタッフが働いているそうです。(人数はうろ覚えです)
 現在修復にかかっているというゴッホの最後のパレットを見せて貰いました。分厚く絵の具の盛り上げられた重厚なもので、専門家が見れば絵の具の配置や混ぜ合わせ方から様々なことを読みとれるのでしょうが、残念ながら私には猫に小判状態でした。エックス線で透視すると、キャンバスの釘がはっきりと映し出され、釘の種類や材質からも制作年代や真贋を推し量る手だてのひとつになるのだそうです。また、良くあることですが、一枚の絵の下に別の絵が描かれているということもはっきりと映し出されています。最近、ドランのある作品の一枚の下に、三枚も別の絵が重なっていることが分かったと言っていました。

                        (この項続く)