国芳のキツネ

 国芳の展覧会があったので、府中の美術館へ行ってみました。新緑の中、気持ちの良い日で、我が家から30分かけて歩きました。
 この人がどのあたりの時代に生きた人かあまり知識がなかったのですが、明治の初めまで生きて、西洋画の技法も取り入れようとしていたことに驚きました。ただ、それは成功しているとは思えず、遠近法など無視した大胆な構図の方が遙かに面白いものでしたが。巨大なワニザメやら踊る猫やら実に不思議な世界で、二時間ほどかけて見ても少しも飽きなかったほどです。
 その中で、キツネが化ける修行をしている絵があって、お師匠さんらしいのがもったいぶった様子で何やら指導をしています。ちょうど一月ほど前、王子に行き、「王子のキツネ」の舞台を歩いたものですから、ことさら印象に残りました。前のワニザメや猫も含め、こういう類の作品を「奇想」というキーワードでくくることによって再評価が進んだと書いてありましたが、世界の絵画史の中で日本の古典的な絵というものはどういう位置を占めるのでしょうか。何か我々の絵の見方、評価の仕方に統一性が取れていないような気がしています。