義仲の鎧(1)

 5月初め、滋賀県膳所にある義仲寺で奉扇会という儀式があり、縁あって見学をさせて貰うことが出来ました。義仲寺は、この近くの粟津の松原で源義経の軍と戦って命を落とした木曽義仲の墓のあるところです。
 この寺に芭蕉の墓が建てられてあり、翁堂という小さな堂内に手に錫を持った芭蕉翁の像が祀られています。秋から冬にかけてはこの錫を手にしていますが、毎年5月の初めに錫を扇に持ち替えるようにする、夏の間は扇を手にしているようにというのがこの儀式の目的だそうです。芭蕉が何故この義仲寺に墓を作ることを望んだのか、知識はありませんが、たびたびここを訪れていたのは確かなようで、境内には辞世の句「旅に病んで・・・」の句碑も建てられています。
 儀式そのものは小一時間ほどの簡素なもの、参列者も境内が狭いこともあってごく限られた人数でしたけれども、若葉の緑あふれる中、非常に好もしい行事でした。

                                                       (この項続く)