道を尋ねること(1)

 見ず知らずの人からよく道を聞かれたり、何かを尋ねられたりする人というのがあるようです。
 聞こうとする人はどこで相手を判断しているのだろうか。近寄りにくい人というのは当然避けるだろうし、何かこの人なら聞いても大丈夫そうだというオーラのようなものがあるのかも知れない。外国に行った場合、何かを尋ねたいと思った時、辺りを見回してどの人に聞こうかというのは結構せっぱ詰まった状況であることも多くて、正しく相手を選ぶかどうかは決定的に重要になることがあります。例えば顔を合わせた瞬間に、これは聞いていい人かそうでないのかはパッと分かるようで、特に外国にいて心細い思いをしているとそういった感覚が研ぎ澄まされてくるのではないかと思えます。

 サハラ砂漠に不時着して、生死の境目にいたサン・テグジュペリに、
 「ね・・・ひつじの絵をかいて!」
と、小さな星の王子が声をかけたのは、ものを尋ねたのではなかったけれども、正しく相手を選んだわけです。いや逆に、サン・テグジュペリ自身が正しく話すべき相手を見つけたのだと言っていいかも知れません。人が住んでいるどんなところからも千マイルも離れていて、厳しい砂の世界にぽつんといたからこそ、正しい相手を見つけることが出来たと思います。

                 (この項続く)