道を尋ねること(2)

 仕事で顕微鏡をのぞいていたりすると、顕微鏡の下にある金属だのセラミックスだのの材料がどのような履歴をたどってきたのかがかなりの程度分かります。どのような過程を、道を通って現在の姿になったのか、各種の物理的な分析も含めて、材料を知るというのはその履歴を知るということにもなります。それと同時に、ある目的のためにはこれからどのような処理をすればよいのか、どのような道をたどらせればよいのかが予測出来ます。これは、材料にこれからの道を尋ねられているようなものではないでしょうか。
 元々人間の目は可視光と物との相互作用の結果を情報として見ているので、通常の顕微鏡で見えるのはこの範囲ですが、紫外線やエックス線、電子線等を物に当ててその結果を情報として見るようになったのは最近のことと言えます。現在では電子顕微鏡の発達によって一個一個の原子の存在位置を見ることが出来るようになっていますが、体のサイズが1メートルから2メートルの人間が十億分の一メートルのサイズの原子一つを見るというのは、月の表面に立って地球上の人間一人を見ることに相当すると聞いたことがあります。
                    (この項続く)