歩く速さ(1)

 二年前、ロンドンを訪れたとき、人々の歩く速さに驚いたことがあります。どう見ても東京よりずっと速い。日本人はせっかちだから、歩く速さも一番速いのではと漠然と思っていましたが、そうではないみたいです。もっとも足の回転数だけは速いのかも知れません。ロンドンへ行ったのはこの金融危機の起こる前ですから、経済も絶好調の時だったわけで、それと関連するのかとも思います。今だったらもう少しゆっくり歩いているのでしょうか。全部比べたわけではありませんが、パリでもベルリンでも、ロンドンほど速くは歩かないような気がします。もちろんイギリスでも田舎は全く別です。

 以前、メキシコに住んでいた人から、こんな話を聞きました。彼が日本にいる時と同じ早さで街を歩くと、メキシコ人達が目を丸くして言うのだそうです。
 「あのハポネ(日本人)は飛ぶように歩く。」
と。

 実際に飛ぶように歩く人たちを、ネパールで見ました。シェルパと言われる人たちが険しい山道を歩く速さは、本当に信じられないくらい速い。どこかの尾根筋や谷間で起こったことは、瞬く間に近隣に伝わります。
               (この項続く)