テルマエ・ロマエ再び

 イタリア・フィレンツェに近い(ローカル鉄道で1時間ほど)モンテカチーニ・テルメという街に何日か滞在しました。いわゆる温泉保養地で、街の中に何カ所か「温泉」があります。日本のものとは異なり、基本的には飲用、プール式に入ることも出来るようです。最大の施設は実に豪壮で、一日、温泉の湯をちびちびとカップから飲みながら広大な敷地内を悠々と散策、休養して過ごすというのがスタイルらしく見えました。
 ところが、そこを実際に利用している人がほとんど見られなく、我々のような見学の旅行者以外に客のいる気配がしません。温泉の湯をくむたくさんの蛇口が、寒々としているばかり。果たしてこれでやっていけるのか、と心配になります。街のホテルの稼働率もそれほど高いようには見えませんでしたし。それに二年前に来たときには営業していたとても古くて由緒ありそうな温泉施設の一つは、廃業した様子で、外から見える中庭の彫刻も放置されたまま荒れ始めて見えます。経済の状況を受けてこのような文化も衰退してゆくのでしょうか。日本でのマンガ作品の人気とは裏腹に行く末が気になるところです。
 イタリアの不況は世に取りざたされますが、我々も泊まったホテルで盗難に遭い、道を聞いて案内されたら金を請求されたりと、かなり世知辛くなっている印象はあります。裕福そうな別荘や住宅が売りにでていることもありますし。街をゆく人々の様子や全体の雰囲気にはそれほどせっぱ詰まった様子は見受けられないのですが、旅行者の目というものはどこまで見えるものなのだろうかと考えてしまいます。