アソーレス紀(1)

 この夏、ポルトガルの西海上にあるアソーレスという島(群島)を訪ねました。アゾレスと表記されることも多いのですが、濁らない響きの方が感じが良いと思っています。
 アメリ東海岸ヨーロッパ大陸とのちょうど中間にあり、ヨーロッパの西の果てになると思います。(大陸の西の果てはポルトガルのロカ岬)この地理的条件から、歴史的には複雑な役割を果たしてきたようです。
 9つの島からなる群島ですが、今回はファイアル島とピコ島のみを訪ねました。ファイアルは遠洋航海をするヨットの寄港地として名が知られていて、やってきたヨットマンたちが港の岸壁、敷石の上に絵のメッセージを描き残してゆくのが習慣になっているそうです。数え切れないほどのメッセージを見てゆくと、中に南米先端のフェゴ島から50日かけてたどり着いたというものもありました。港にはたくさんのヨットが風に索を鳴らしています。島の気候は変わりやすく、一日のうちに何度も短い雨が降ったりして、気温としてはポルトガル本土より涼しめでした。アジサイの多い島と聞かされていましたが、8月ではもうほとんどしおれかかっています。
 アソーレスはかつて捕鯨の基地として栄えて、現在ではホエールウォッチング、ダイビング、フィッシング、ヨットとマリンスポーツをメインにした観光でにぎわっています。「白鯨」にもアソーレスのことが出てくるし、捕鯨船の乗組員にはここの出身者が多かったということです。
                        (この項、続く)